医療の効率を妨げる原因!?不要な疑義照会を減らすための取り組み
こんにちは。アシオです。
2023年 12月より休職中のHSP気質の薬剤師です。(2024年2月現在)
薬剤師の業務の一つに『疑義照会』があります。
この疑義照会が『医師』や『薬剤師』の業務を妨げになることがあります。
今回は業務の妨げとなっている疑義紹介の一例と、それを解決するための今後の課題について書きたいと思います。
・薬剤師の不要な疑義照会に困っている人
疑義照会とは?
『疑義照会』とは、医師の出した処方箋に誤りが見られたときに、電話等で確認することでです。
薬剤師は、その知識・経験や患者さまの薬剤服用歴などから、患者さまの生命や健康上のリスクの発生について、未然に防ぐ役割を担っています。『処方せん中に疑わしい点(疑義)がある場合は、発行した医師等に問い合わせて確かめること (照会)ができるまで調剤してはならない。』これは法律で定められた薬剤師の義務です。(薬剤師法第24条)
一般的な疑義照会の例
10年間の薬剤師人生で様々な疑義照会をしてきました。
その一例を紹介します。
例❶ 薬の処方量
Rp)1 メイラックス細粒1%(10mg/g) 0.9g
1日1回 夕食後 30日分
(前回処方)Rp)1 メイラックス錠1mg 1錠
1日1回 夕食後 30日分
※ メイラックス→ 成分名 : ロフラゼプ酸エチル
(用法用量 1日1回 1〜2mgまで)
門前のクリニックより、このような処方が来ました。
前回処方が、ロフラゼプ酸エチルを1回1mgの服用で、1回量を0.9mgへ減量するために今回より粉薬へ変更になったのだと思います。
しかし、メイラックス細粒1%(100mg/g) 0.9gは『9mg』のため、0.09gの間違いです。(通常の10倍量!)
医師に問い合わせをして、
Rp)1 メイラックス細粒1%(10mg/g) 0.09g
1日1回 夕食後 30日分
へ変更となりました。
例❷ 薬の飲み合わせ
Rp)1 クラリスロマイシン錠200mg 2錠
1日2回 朝、夕食後 5日分
Rp)2 アスベリン錠20mg 3錠
1日3錠 毎食後 5日分
ムコダイン錠500mg 3錠
1日3錠 毎食後 5日分
風邪薬の処方を持ってきた患者がいました。
この方は、門前の精神科を受診しており、
『ラツーダ錠60mg』という薬を飲んでいました。
『クラリスロマイシン錠200mg』と『ラツーダ錠60mg』は一緒に服用することができないため、クラリスロマイシン錠がセフカペンピボキシル錠と言う『別の抗生剤』へ変更となりました。
業務を妨げる疑義照会
一方、医師や薬剤師の業務を妨げる疑義照会もあります。
薬剤師は医師の処方を勝手に変えるできません。(法律で禁止されています。)
薬剤師は処方箋に記載された医薬品に関して、医師や歯科医師の同意を得ないと変更はできません。
粉薬が飲めない人に粉薬が処方され錠剤への変更希望があった場合、薬剤師が処方した医師に確認し許可を得ることではじめて変更できるのです。
例❶ 後発品から先発品
例えば、以下のような処方箋がきたとします。
Rp)1 ファモチジンOD錠10mg 「日医工」 1錠
1日1回 朝食後 30日分
このような処方箋を『後発品(ジェネリック)指定』などと読んだりします。
「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」は、「新薬(先発医薬品)」の特許が切れたあとに販売される、新薬と同じ有効成分・品質・効き目・安全性が同等であると国から認められたお薬です。
新薬に比べ開発費が抑えられるために、新薬より低価格なお薬です。
もし患者から
後発品は嫌だから、先発品でもらいたい!
と言われたとします。
そうすると、医師へ処方変更を依頼しなければなりません。
先発品 : ガスターD錠10mg 15.50円/錠
後発品(ジェネリック): ファモチジンD錠10mg「日医工」 10.10円/錠
処方箋変更のルールで、記載されている薬よりも『高いもの』へ変えることは禁止されています。
そのため『後発(ジェネリック)指定』の薬を先発へ変えることはできません。
これを解決するために、一般名処方というものがあります!
処方箋の薬品名の前に [般] が付いている処方箋になります。
先ほどの処方箋だと
Rp)1 [般] ファモチジン口腔内崩壊錠 1錠
1日1回 朝食後 30日分
この処方だと、患者は先発品、後発品の好きな方を選ぶことができます。
平成24年4月1日以降、後発医薬品が存在する医薬品について、薬価基準に収載されている品名に代えて、一般的名称に剤形及び含量を付加した記載(以下「一般名処方」という。)による処方箋を交付した場合に、医療機関において一般名処方加算を算定できることとなりました。
例❷ 日数の変更(残薬の調整)
Rp)1 ファモチジンOD錠10mg「日医工」 1錠
1日1回 朝食後 30日分
患者から
前回もらった分が残っているから、10日分で大丈夫です。
この場合も医師に連絡が必要です。
なぜなら、病院やクリニックでは30日分で処方されており、薬局で勝手に10日分に減らすことはできません。
例③ 薬の削除
Rp)1 [般] アムロジピン口腔内崩壊錠5mg
1日1回 朝食後 30日分
Rp)2 [般] ロスバスタチン腔内崩壊錠2.5mg
1日1回 夕食後 30日分
患者から
Rp)2 [般] ロスバスタチン腔内崩壊錠2.5mgが残っているので、今回はいらないです。
こちらも薬局で勝手に減らすことはできません。
プロトコール
これらを解決するために、簡素化プロトコールを実施している病院もあります。
簡素化プロトコールは、事前に取り決めをしていた事項について処方箋のについては、電話などの疑義照会を省力し、書類による事後報告にすることです。
薬物治療管理の一環として、調剤上の典型的な変更に伴う疑義照会を減らし、患者さんへの薬学的ケアの充実および処方医や保険薬局の負担軽減を図る目的で「院外処方箋における疑義照会の簡素化プロトコール」を運用しています。
簡素化プロトコールの一例
・日数変更(残薬調整)
・後発品を先発品へ変更
・処方薬の削除 など
タスクシフトで薬剤師にも権限を!
薬剤師は医師の処方を勝手に変えることは、法律で禁止されています。
2024年4月より、医師の働き方改革が始まります。
医師の負担を軽減するための制度改定が一刻も早く進むことを切に願います。
まとめ
『安全で安心な医療』の提供のために疑義照会は必須の業務となります。
一方、悪い例のように医師の業務を妨げていることも事実です。
今後の『医師の働き方改革』の一環で、全てのクリニックで、簡素化プロトコールのような取り決めができれば、円滑な医療になっていくと考えます。