バルプロ酸とラモトリギン併用時の注意点!薬剤師が分かりやすく解説
こんにちは。アシオです。
2023年 12月より休職中のHSP気質の薬剤師です。(2024年4月現在)
SNSで若手薬剤師向けの勉強アカウントを運営しています。
双極性障害の治療では、躁状態の安定のために『抗うつ薬』と『気分安定薬』が併用されることが多いです。
今回は『併用されることが多い』気分安定薬の中で、デパケン錠(バルプロ酸ナトリウム)とラミクタール(ラモトリギン)の併用時の注意点について書きたいと思います。
・薬剤師1〜3年目の人
・『気分安定薬』の使い分けに自信がない人
・デパケン錠(バルプロ酸ナトリウム)とラミクタール(ラモトリギン)の併用時の注意点を知りたい人
双極性障害とは?
双極性障害は、『躁うつ病』とも言われます。
うつ症状(憂鬱な気分、意欲の低下)と躁症状(気分の高揚、万能感)を交互に繰り返す状態です。
気分安定薬とは?
気分安定薬は、双極性障害の『躁病相』を緩和するために『抗うつ薬』と併用する薬です。
気分安定薬には『リーマス(炭酸リチウム)』、『デパケン錠(バルプロ酸ナトリウム)』、『テグレトール(カルバマゼピン)』、『ラミクタール(ラモトリギン)』があります。
デパケン錠(バルプロ酸ナトリウム)
ラミクタール(ラモトリギン)
併用注意のメカニズム
デパケン錠(バルプロ酸ナトリウム)とラミクタール(ラモトリギン)の併用注意のメカニズムは下記表になります。
① グルクロン酸抱合の競合
② 尿中への排泄が阻害
③ ラミクタール(ラモトリギン)の血中濃度が上昇!
① グルクロン酸抱合の競合
デパケン錠(バルプロ酸ナトリウム)、ラミクタール(ラモトリギン)共に肝臓でグルクロン酸抱合を受けます!
② グルクロン酸の枯渇
デパケン錠(バルプロ酸ナトリウム)とラミクタール(ラモトリギン)を合わせて飲むことで、体内のグルクロン酸が枯渇してしまいます。
③ ラミクタール(ラモトリギン)の血中濃度が上昇
グルクロン酸抱合を受けずに体外に排出されなかったラミクタール(ラモトリギン)が血中濃度の上昇を起こし、重篤な皮膚障害を引き起こします。
ラモトリギンの増量方法
これらを踏まえ、2015年2月にデパケン錠(バルプロ酸ナトリウム)とラミクタール(ラモトリギン)の併用についてブルーレター(緊急安全性情報)が出されました。
厚生労働省 抗てんかん薬、双極性障害治療薬「ラミクタール錠」投与患者における重篤な皮膚障害に関する注意喚起について
これらを併用する場合は、ラミクタール(ラモトリギン)の段階的な増量が必要になります。
① 最初の2週間は1回25mgを隔日に経口投与
② 次の2週間は1日25mgを1日1回経口投与
③ その後は1〜2週間毎に1日量として25〜50mgずつ漸増する。
④ 維持用量は1日100〜200mgとし1日2回に分割して経口投与
(通常は最大400mg/日まで)
まとめ
デパケン錠(バルプロ酸ナトリウム)とラミクタール(ラモトリギン)の併用時の注意点について書きました。
実際の臨床現場でも、上記2剤が処方されることは度々あります。
重篤な皮膚障害を回避するためにも、しっかり確認しましょう!
引き続き、精神科領域の薬についてまとめていくので是非ご覧ください!
今回の記事を書くにあたり『下記図書』を参考にしました!
分かりやすくまとまった良書なのでご興味ある方は是非手に取ってきてください!